ほうれい線ヒアルロン酸の失敗例と対処法|原因・予防・修正方法を解説

10秒でわかるこの記事の要約
  • ほうれい線を目立たなくしたい。その想いからヒアルロン酸注射を検討されている方は多いでしょう。しかし同時に「不自然な仕上がりになったらどうしよう」「失敗したら取り返しがつかないのでは」といった不安を抱えていらっしゃるのではないでしょうか。
  • 確かに、ヒアルロン酸注射には一定のリスクが存在します。医師の技術や経験、使用する製剤、注入量などによって、仕上がりは大きく左右されます。けれども、失敗のパターンや原因を事前に理解し、信頼できる医師を選ぶことで、リスクは大幅に軽減できるのも事実です。
  • 本記事では、ほうれい線へのヒアルロン酸注射における失敗例、その原因、失敗してしまった場合の対処法、そして失敗を回避するための具体的な方法まで、医学的根拠に基づいて詳しく解説いたします。不安を煽るのではなく、正しい知識を持って賢明な選択をしていただくための情報をお届けします。

目次

ほうれい線へのヒアルロン酸注射とは(失敗を理解する前提知識)

ヒアルロン酸注射は、鼻の両脇から口角に向かって刻まれるほうれい線を目立たなくするために、皮膚の内側にヒアルロン酸を注入する治療です。ヒアルロン酸は、もともと人体に存在する成分であり、水分を保持する性質があります。

施術の基本概要

施術では、極細の針やカニューレを用いて、ほうれい線の直下、または頬の適切な位置にヒアルロン酸を注入します。これにより、凹んだ部分にボリュームを補い、線を浅くする効果が期待できます。施術時間は10〜30分程度で、ダウンタイムも比較的少ないため、手軽に受けられる治療として人気があります。

なぜほうれい線治療は難しいのか

ほうれい線への注入は、実は美容医療の中でも高度な技術を要する施術です。その理由は以下の通りです。

  • 解剖学的な複雑さ: ほうれい線周辺には、顔面動脈などの重要な血管が走行しています。これらを避けながら適切な深さに注入する必要があります。
  • 顔の動き: ほうれい線は、表情筋の動きによって形成されます。注入位置や量を誤ると、笑ったときに不自然な膨らみが生じる可能性があります。
  • 個人差: ほうれい線の深さや形状、頬の脂肪の付き方、骨格などは人によって大きく異なります。画一的な注入では、理想的な結果は得られません。

ヒアルロン酸の種類と選び方

ヒアルロン酸には、粒子の大きさや架橋度(硬さ)によって様々な種類があります。ほうれい線治療には、中程度〜やや硬めの製剤が適していますが、注入する深さや部位によって最適な製剤は異なります。

代表的なブランドには、ジュビダームビスタ、レスチレン、クレヴィエルなどがあります。正規品を使用することが安全性と効果の面で重要です。

適切な注入量と深さの重要性

ほうれい線治療において、「どれだけ注入するか」「どの深さに注入するか」は結果を左右する最も重要な要素です。注入量が多すぎると不自然な膨らみが生じ、少なすぎると効果が不十分になります。また、注入深度が浅すぎるとボコボコとした凹凸ができ、深すぎると効果が現れません。

「失敗」とは何か?失敗の定義【重要】

ヒアルロン酸注射における「失敗」を理解するには、まずその定義を明確にする必要があります。

医学的な失敗(合併症)と仕上がりの不満足の違い

失敗には、大きく分けて2つのタイプがあります。

  • 医学的な合併症: 血管塞栓、感染症、アレルギー反応、肉芽腫形成など、健康や安全に関わる問題です。これらは緊急の医療対応が必要な真の「失敗」といえます。
  • 審美的な不満足: 不自然な膨らみ、左右差、期待した効果が得られないなど、見た目に関する問題です。これらは深刻度は低いものの、患者にとっては大きなストレスとなります。

一時的な反応と真の失敗の見極め

施術直後の腫れや赤み、内出血は、一時的な反応であり「失敗」ではありません。これらは数日から1週間程度で落ち着きます。一方、数週間経っても改善しない不自然な膨らみや、左右差が目立つ状態は、真の失敗である可能性があります。

主観的な失敗と客観的な失敗

  • 主観的な失敗: 本人は気に入らないが、他人から見ると自然に見える場合。期待値と結果のギャップによるものです。
  • 客観的な失敗: 誰が見ても明らかに不自然、または医学的に問題がある状態。

「失敗」と感じる具体的なケース

多くの方が「失敗」と感じるのは、以下のようなケースです。

  • 笑うと頬が不自然に盛り上がる
  • ほうれい線が消えず、むしろ目立つようになった
  • 顔全体が腫れぼったく、老けて見える
  • 注入部位がボコボコしている
  • 左右で明らかに違う

ほうれい線ヒアルロン酸注射でよくある失敗例【最重要セクション】

ここでは、実際に報告されている失敗例を詳しく見ていきます。

見た目の失敗

不自然な膨らみ・ボコボコ

症状: ほうれい線に沿って、ミミズ腫れのような膨らみができたり、皮膚表面がボコボコと凹凸になったりします。

原因: 注入深度が浅すぎる、または粒子の細かい製剤を表層に注入したことが原因です。皮膚の薄い部分に注入すると、ヒアルロン酸が透けて見え、凹凸が目立ちます。

発生頻度: 技術の未熟な医師による施術で比較的よく見られます。

対処法: ヒアルロニダーゼという酵素を注射することで、ヒアルロン酸を溶解できます。部分的な修正も可能です。

左右差・非対称

症状: 左右のほうれい線の深さや形状が明らかに異なる状態です。

原因: 注入量や位置が左右で異なることが原因です。顔の骨格や筋肉は元々左右対称ではありませんが、注入技術によって悪化させてしまうケースがあります。

発生頻度: 中程度。特に、一度に大量に注入した場合に起こりやすい傾向があります。

対処法: 少ない側に追加注入するか、多い側を溶解して調整します。

ほうれい線がかえって目立つ(逆効果)

症状: 施術前よりもほうれい線が深く、または長く見えるようになります。

原因: ほうれい線の直下に注入した結果、線の両側が持ち上がり、溝がより強調されてしまうケースです。また、頬に過剰に注入すると、重力で下に垂れ、ほうれい線が深く見えることもあります。

発生頻度: やや稀ですが、注入位置の選択ミスで起こります。

対処法: 溶解して、適切な位置に再注入します。

頬が膨らみすぎて老けて見える

症状: 頬がパンパンに膨らみ、顔全体が腫れぼったく、かえって老けた印象になります。

原因: ほうれい線を目立たなくするために頬にボリュームを補うアプローチは有効ですが、注入量が多すぎると逆効果になります。特に、もともと頬に脂肪が多い方には不向きです。

発生頻度: 過剰注入のケースで比較的よく見られます。

対処法: ヒアルロニダーゼで溶解し、適切な量に調整します。

鼻の下が間延びして見える

症状: 鼻の下から上唇までの距離が長く見え、顔のバランスが崩れます。

原因: ほうれい線の上部(鼻の付け根付近)に過剰に注入した場合に起こります。

発生頻度: やや稀です。

対処法: 該当部分を溶解します。

笑うと不自然に盛り上がる

症状: 無表情では自然に見えるものの、笑ったり話したりすると、ほうれい線周辺が不自然に盛り上がります。

原因: 表情筋の動きを考慮せずに注入したことが原因です。

発生頻度: 中程度。動的な評価を怠った場合に起こります。

対処法: 部分的な溶解と再注入が必要です。

チンダル現象(青白く透けて見える)

症状: 注入部位が青白く透けて見え、不健康な印象を与えます。

原因: 皮膚の浅い層に注入されたヒアルロン酸が、光を反射して青白く見える現象です。

発生頻度: 浅い注入で起こりやすく、特に皮膚の薄い部位で見られます。

対処法: 溶解が必要です。

医学的な失敗・合併症

血管塞栓(最も深刻)

症状: ヒアルロン酸が血管内に入り、血流を遮断することで、皮膚の壊死や失明といった重篤な合併症を引き起こします。激しい痛み、皮膚の色の変化(白→紫)、視力障害などが症状です。

原因: 解剖学的知識の不足や、血管内への誤注入が原因です。

発生頻度: 極めて稀ですが、発生した場合は緊急対応が必要です。

対処法: 直ちにヒアルロニダーゼを注射し、血管を拡張させる薬剤を投与します。数時間以内の対応が重要です。

感染症

症状: 注入部位の発赤、腫れ、熱感、膿の排出などが見られます。

原因: 不衛生な環境での施術や、アフターケアの不備が原因です。

発生頻度: 稀ですが、発生した場合は抗生物質による治療が必要です。

対処法: 速やかに医師に相談し、抗生物質の投与を受けます。

アレルギー反応

症状: かゆみ、発疹、腫れ、呼吸困難などが現れます。

原因: ヒアルロン酸そのものへのアレルギーは稀ですが、製剤に含まれる麻酔薬や防腐剤に反応することがあります。

発生頻度: 極めて稀です。

対処法: 抗ヒスタミン薬やステロイドの投与、重症の場合は溶解も検討します。

肉芽腫形成

症状: 注入部位に硬いしこりができます。

原因: 体がヒアルロン酸を異物と認識し、免疫反応を起こした結果です。非正規品や不純物の多い製剤で起こりやすい傾向があります。

発生頻度: 稀ですが、発生すると治療が困難です。

対処法: ステロイド注射や外科的切除が必要になる場合があります。

皮膚壊死

症状: 注入部位の皮膚が黒ずみ、壊死します。

原因: 血管塞栓による血流障害や、過度の圧迫による組織の壊死が原因です。

発生頻度: 極めて稀ですが、発生すると瘢痕が残る可能性があります。

対処法: 緊急対応が必要です。ヒアルロニダーゼの投与、血流改善治療などを行います。

神経損傷

症状: 顔面の一部にしびれや麻痺が生じます。

原因: 注入時に神経を傷つけた場合や、ヒアルロン酸が神経を圧迫した場合に起こります。

発生頻度: 極めて稀です。

対処法: 多くは一時的ですが、回復に数週間〜数ヶ月を要することがあります。

失敗が起こる原因

失敗の多くは、以下の要因によって引き起こされます。

医師の技術不足

最も大きな原因は、医師の技術や経験の不足です。注入位置、深さ、量の判断を誤ると、様々な失敗につながります。

解剖学的知識の不足

顔面の血管や神経の走行を正確に理解していない医師による施術は、重篤な合併症のリスクが高まります。

不適切なヒアルロン酸製剤の選択

部位や目的に合わない硬さ・粒子サイズの製剤を選択すると、不自然な仕上がりになります。

患者の骨格・脂肪の状態の見誤り

患者の顔の構造を適切に評価せず、画一的な注入を行うと、期待した結果が得られません。

過剰な注入

「多く入れれば効果も高い」という誤解から、過剰に注入してしまうケースがあります。

安価なクリニック・非正規品の使用

価格を抑えるために、非正規品や品質の劣る製剤を使用するクリニックも存在します。これらは安全性が保証されておらず、合併症のリスクが高まります。

カウンセリング不足

患者の希望や不安を十分に聞かず、医師の一方的な判断で施術を進めると、仕上がりへの不満につながります。

失敗してしまった場合の対処法【実用的】

万が一、失敗してしまった場合でも、適切な対処によって状況を改善できます。

すぐにクリニックに連絡すべき症状

以下の症状が現れた場合は、直ちに施術を受けたクリニックに連絡してください。

  • 激しい痛み
  • 皮膚の色の急激な変化(白くなる、紫になる)
  • 視力の低下や視野の異常
  • 強い腫れや熱感
  • 膿が出る
  • 呼吸困難

これらは重篤な合併症の可能性があり、緊急対応が必要です。

ヒアルロニダーゼによる溶解

ヒアルロン酸注射の最大の利点は、「溶かすことができる」という可逆性です。ヒアルロニダーゼという酵素を注射することで、注入したヒアルロン酸を分解できます。

溶解のタイミングと方法

  • タイミング: 緊急の場合(血管塞栓の疑いなど)は直ちに。審美的な不満の場合は、腫れが落ち着いた2週間後程度が目安です。
  • 方法: ヒアルロニダーゼを問題のある部位に注射します。効果は24〜48時間で現れます。
  • 注意点: 溶解は周囲のヒアルロン酸にも影響するため、元々体内にあったヒアルロン酸も一部失われる可能性があります。

自然吸収を待つべきケース

軽度の左右差や、わずかな膨らみの場合は、3〜6ヶ月待って自然吸収を待つ選択肢もあります。ヒアルロン酸は時間とともに体内に吸収されるためです。

セカンドオピニオンの重要性

施術を受けたクリニックが誠実に対応してくれない場合や、対処法に不安がある場合は、他のクリニックでセカンドオピニオンを受けることをおすすめします。

訴訟や消費者センターへの相談(最終手段)

明らかな医療過誤があり、クリニックが責任を認めない場合は、消費者センターや医療問題に詳しい弁護士に相談することも検討できます。ただし、これは最終手段として考えるべきです。

失敗を回避するための事前対策

失敗を防ぐには、施術前の準備が最も重要です。

信頼できる医師・クリニックの選び方

以下のポイントを確認しましょう。

  • 形成外科専門医または皮膚科専門医の資格を持っているか
  • ヒアルロン酸注入の経験が豊富か(年間症例数を確認)
  • ほうれい線治療の症例写真を多数見せてもらえるか
  • クリニックのウェブサイトや口コミの評判
  • カウンセリングでの医師の態度(誠実か、一方的でないか)

カウンセリングで確認すべきポイント

カウンセリングでは、以下の点を必ず確認してください。

  • 使用するヒアルロン酸の製剤名とブランド
  • 正規品であることの証明
  • 注入予定の量と部位
  • 予想される仕上がりのイメージ(写真などで確認)
  • 起こりうるリスクと合併症の詳細な説明
  • 失敗した場合の対処法(溶解の可否、費用負担など)
  • 料金の詳細(追加費用の有無)

症例写真の見方

クリニックが提示する症例写真を見る際は、以下に注意してください。

  • 施術前後の写真が同じ角度・照明で撮影されているか
  • あなたと似た骨格・年齢・ほうれい線のタイプの症例があるか
  • 不自然な加工がされていないか

使用製剤の確認(正規品かどうか)

必ず正規品を使用しているか確認しましょう。パッケージや製品の箱を見せてもらうことを遠慮しないでください。

適切な注入量の見極め

「多ければ多いほど良い」という考えは危険です。控えめな量から始め、必要に応じて追加注入する「段階的アプローチ」が安全です。

デザイン確認の重要性

施術前に、医師と一緒に鏡を見ながら、どこにどのように注入するかを確認しましょう。イメージの共有が重要です。

段階的な注入を選ぶ

初回は控えめに注入し、2週間後に不足分を追加する方法なら、失敗のリスクを大幅に減らせます。

失敗しない医師・クリニックの見分け方

優れた医師・クリニックには、以下のような特徴があります。

専門医資格・経験年数

形成外科専門医、皮膚科専門医などの資格を持ち、美容医療に5年以上携わっている医師が望ましいでしょう。

ほうれい線治療の症例数

ほうれい線への注入を年間数百例以上行っている医師であれば、豊富な経験があると判断できます。

解剖学的知識の深さ

血管や神経の走行について詳しく説明できるか、リスクについて具体的に話せるかが重要です。

リスクについて正直に説明してくれるか

メリットだけでなく、起こりうるリスクや合併症についても率直に説明する医師は信頼できます。

失敗時の対応方針が明確か

「万が一失敗した場合、無料で溶解します」など、明確なポリシーを持っているクリニックは誠実です。

アフターフォロー体制

施術後に何かあった場合、すぐに連絡できる窓口があるか、休診日でも緊急対応が可能かを確認しましょう。

口コミ・評判の確認方法

インターネット上の口コミは参考になりますが、すべてを鵜呑みにするのは危険です。複数のサイトを確認し、極端に良い評価や悪い評価だけでなく、中立的な意見を重視しましょう。

“安さ”を売りにしていないか

「相場より大幅に安い」ことを前面に出しているクリニックは、非正規品の使用や経験の浅い医師による施術の可能性があります。適正価格であることも、信頼性の指標です。

カウンセリングで必ず確認すべきこと

カウンセリングは、失敗を防ぐ最後の砦です。以下の点を必ず確認してください。

使用するヒアルロン酸の種類とブランド

製剤名(ジュビダームビスタ、レスチレン、クレヴィエルなど)を明確に教えてもらいましょう。「ヒアルロン酸」とだけ言われた場合は、詳細を尋ねてください。

注入する量と部位

「ほうれい線に1cc」など、具体的な量と部位を確認します。曖昧な説明しかしない医師は避けるべきです。

予想される仕上がりのイメージ共有

希望する仕上がりのイメージ(自然な感じ、しっかり消したいなど)を明確に伝え、医師と共有しましょう。可能であれば、理想の仕上がりの写真を持参すると良いでしょう。

リスクと合併症の説明

血管塞栓、感染症、不自然な仕上がりなど、起こりうるリスクについて詳しい説明があるかを確認します。

失敗した場合の対処法

仕上がりに満足できなかった場合、どのように対応してもらえるのか(溶解の可否、費用負担など)を事前に確認しましょう。

料金の詳細(追加費用の有無)

提示された料金に何が含まれているか(診察料、麻酔代、アフターケアなど)を確認し、追加費用が発生する可能性についても聞いておきましょう。

修正が必要な場合の対応

追加注入や溶解が必要になった場合の費用や対応方針を明確にしておくことが重要です。

部位別の失敗リスクと対策

ほうれい線治療には、いくつかのアプローチがあり、それぞれ失敗のリスクが異なります。

ほうれい線に直接注入する場合

方法: ほうれい線の溝に沿って、直接ヒアルロン酸を注入します。

失敗リスク: 注入深度が浅いとボコボコになりやすく、量が多すぎると不自然な盛り上がりになります。また、表情の動きで違和感が出やすい部位です。

対策: 適切な深さ(真皮深層〜皮下組織)に、少量ずつ丁寧に注入する技術が求められます。

頬に注入してリフトアップする方法

方法: 頬の高い位置にボリュームを補うことで、顔全体を持ち上げ、間接的にほうれい線を目立たなくします。

失敗リスク: 注入量が多すぎると、頬がパンパンに膨らみ、かえって老けて見えます。また、下に垂れてほうれい線が深く見えることもあります。

対策: 患者の骨格や脂肪の付き方を正確に評価し、適量を見極めることが重要です。

鼻基部への注入

方法: 鼻の付け根(鼻基部)にボリュームを補い、ほうれい線の上部を目立たなくします。

失敗リスク: 注入量が多いと、鼻の下が間延びして見えたり、鼻が横に広がって見えたりします。

対策: ごく少量の注入に留め、全体のバランスを見ながら調整します。

それぞれの失敗リスクと回避方法

どの方法を選択するかは、患者の年齢、骨格、ほうれい線の深さ、頬の脂肪の状態によって異なります。経験豊富な医師は、これらを総合的に判断し、最適なアプローチを提案してくれます。

年代別の注意点

30代のほうれい線治療

30代では、ほうれい線はまだ浅いことが多く、少量の注入で効果が得られやすい年代です。ただし、過剰な注入は不自然な印象を与えるため、控えめな量から始めることが重要です。

40代のほうれい線治療

40代になると、ほうれい線が深くなり、頬の脂肪も減少してきます。ほうれい線への直接注入だけでなく、頬へのボリューム補充も併用すると効果的です。ただし、バランスが重要で、過剰な注入は老けて見える原因になります。

50代以上のほうれい線治療

50代以上では、ほうれい線が非常に深く、頬のたるみも顕著になります。ヒアルロン酸だけでは限界がある場合もあり、糸リフトやハイフとの併用が検討されることもあります。また、皮膚が薄くなっているため、注入技術がより重要になります。

年齢による失敗リスクの違い

若い年代では過剰注入による不自然さが目立ちやすく、高齢になるほど皮膚の薄さから合併症のリスクがやや高まります。年齢に応じた適切なアプローチを選択することが、失敗を防ぐ鍵となります。

ヒアルロン酸以外の選択肢との比較

ほうれい線治療には、ヒアルロン酸以外にも複数の選択肢があります。それぞれの失敗リスクを比較してみましょう。

項目 ヒアルロン酸注射 糸リフト ハイフ(HIFU)
失敗リスク 中程度(不自然な膨らみ、左右差など) 中〜高(糸の透け、引きつれ、感染など) 低(効果不足が主、重篤な合併症は稀)
修正の可能性 高い(ヒアルロニダーゼで溶解可能) 低い(糸の除去は困難) 中程度(自然に元に戻る)
効果の持続期間 6ヶ月〜1年程度 1〜2年程度 6ヶ月〜1年程度
ダウンタイム 2〜3日(腫れ・内出血) 1〜2週間(腫れ・痛み・引きつれ) ほぼなし(軽い赤み程度)
料金目安 5〜15万円 20〜50万円 15〜40万円
適している人 軽〜中程度のほうれい線、自然な仕上がり希望 中〜重度のたるみ、長期効果希望 軽度のたるみ、メスを使いたくない

ボトックス注射

ボトックスは表情筋を弛緩させる治療で、ほうれい線には直接的な効果は限定的です。ただし、口周りの筋肉の動きを抑えることで、補助的に使われることがあります。失敗リスクは比較的低いですが、笑顔が不自然になる可能性があります。

脂肪注入

自身の脂肪を採取して注入する方法です。効果は長持ちしますが、定着率が不安定で、凹凸が出やすいというリスクがあります。また、脂肪採取の負担もあります。

実際の失敗から学ぶ教訓

よくある失敗パターン

実際に報告されている失敗例から、いくつかのパターンが見えてきます。

  • パターン1: 「もっと効果を」と欲張り、過剰な量を注入した結果、不自然な膨らみになった
  • パターン2: 安さに惹かれて選んだクリニックで、経験の浅い医師に施術され、左右差が出た
  • パターン3: カウンセリングが不十分で、医師とのイメージ共有ができず、期待と異なる仕上がりになった
  • パターン4: 施術直後の腫れを「失敗」と勘違いし、焦って溶解してしまった

どうすれば防げたか

  • パターン1の対策: 段階的な注入を選び、1回目は控えめにする
  • パターン2の対策: 価格ではなく、医師の経験と技術で選ぶ
  • パターン3の対策: カウンセリングで十分に時間をかけ、理想の仕上がりを明確に伝える
  • パターン4の対策: 施術後2週間は腫れが落ち着くのを待ち、焦って判断しない

患者側ができること

失敗を防ぐために、患者側でもできることがあります。

  • 複数のクリニックでカウンセリングを受け、比較検討する
  • 不安や疑問を遠慮せずに医師に伝える
  • 希望する仕上がりのイメージを明確にしておく
  • 焦らず、段階的なアプローチを選ぶ
  • 施術後の経過を写真で記録し、変化を客観的に評価する

医師側の責任

もちろん、最終的な責任は施術を行う医師にあります。医師には以下の責任があります。

  • 十分なカウンセリングと説明
  • 患者の骨格や状態を正確に評価する
  • 適切な製剤と注入量を選択する
  • 高度な注入技術を習得し、常に向上させる
  • 合併症が起きた場合、迅速かつ適切に対応する

失敗を恐れすぎないために

ここまで失敗について詳しく説明してきましたが、過度に恐れる必要はありません。

ヒアルロン酸は溶解できる(可逆性がある)

ヒアルロン酸注射の最大の利点は、気に入らなければ溶かすことができる点です。これは、他の治療法にはない大きな安心材料です。

多くの施術は成功している

失敗例が注目されがちですが、実際には大多数の施術は問題なく終了し、患者は満足しています。適切な医師のもとで受ければ、成功率は非常に高い治療です。

適切な医師選びで大幅にリスクは下がる

この記事で紹介した医師選びのポイントを実践すれば、失敗のリスクは大幅に低減できます。価格ではなく、技術と誠実さで選ぶことが何より重要です。

段階的な施術でリスク管理

初回は控えめに注入し、2〜4週間後に追加するアプローチなら、失敗のリスクを最小限に抑えられます。少し時間はかかりますが、最も安全な方法です。

過度な不安は不要だが、慎重さは必要

失敗を過度に恐れて、何もしないのは残念なことです。しかし、安易に考えて安価なクリニックに飛びつくのも危険です。正しい知識を持ち、慎重に選択することで、理想の結果を得られる可能性は高まります。

30代後半〜50代女性のよくある不安

「失敗したら元に戻らない?」

ヒアルロン酸はヒアルロニダーゼで溶解できるため、元に戻すことが可能です。また、時間が経てば自然に吸収されます。永久的な変化ではありませんので、ご安心ください。

「不自然になったらどうする?」

不自然な仕上がりになった場合は、ヒアルロニダーゼで溶解し、再度適切に注入し直すことができます。ただし、そうならないために、医師選びが最も重要です。

「痛くて我慢できない状態になったら?」

通常、ヒアルロン酸注射で耐えられないほどの痛みが続くことはありません。もし激しい痛みがある場合は、血管塞栓などの合併症の可能性があるため、直ちに医師に連絡してください。

「周りに気づかれるほど変になったら?」

適切な量を注入すれば、周囲に気づかれるほど不自然になることはほとんどありません。万が一そうなった場合も、溶解によって修正可能です。

「やり直しは可能?」

はい、可能です。溶解後、2週間程度空けて再度注入することができます。ただし、何度も繰り返すと皮膚にダメージを与える可能性があるため、最初から慎重に行うことが大切です。

「溶解すると元の状態より悪くなる?」

ヒアルロニダーゼは、注入したヒアルロン酸だけでなく、体内に元々あるヒアルロン酸にも影響を与える可能性があります。そのため、一時的に肌の張りが失われたように感じることがありますが、数週間で回復します。

FAQ(よくある質問)

Q1. ほうれい線のヒアルロン酸で失敗する確率はどのくらいですか?

A. 正確な統計はありませんが、経験豊富な医師による施術では、重篤な合併症の発生率は1%未満とされています。審美的な不満足(仕上がりへの不満)は、医師の技術やカウンセリングの質によって大きく異なります。適切な医師選びで、失敗のリスクは大幅に低減できます。

Q2. 失敗したらどうすればいいですか?

A. まずは施術を受けたクリニックに連絡してください。審美的な不満の場合は、ヒアルロニダーゼによる溶解で修正できます。重篤な症状(激しい痛み、皮膚の色の変化、視力障害など)がある場合は、緊急対応が必要です。クリニックの対応に不安がある場合は、セカンドオピニオンを受けることをおすすめします。

Q3. ヒアルロン酸は溶かせますか?

A. はい、ヒアルロニダーゼという酵素を注射することで溶解できます。これがヒアルロン酸注射の最大の利点です。効果は24〜48時間で現れます。

Q4. 溶解にかかる期間はどのくらいですか?

A. ヒアルロニダーゼを注射後、24〜48時間でヒアルロン酸が分解されます。完全に落ち着くまでには1週間程度かかることがあります。

Q5. 失敗を見分ける方法はありますか?

A. 施術後2週間経っても、明らかな左右差、不自然な膨らみ、ボコボコとした凹凸が残っている場合は、失敗の可能性があります。ただし、施術直後の腫れや内出血は一時的な反応であり、失敗ではありません。判断に迷う場合は、医師に相談してください。

Q6. 不自然な膨らみはなぜ起こりますか?

A. 主な原因は、注入深度が浅すぎること、または注入量が多すぎることです。また、適切でない硬さの製剤を使用した場合にも起こります。経験豊富な医師は、これらを適切に調整できます。

Q7. 左右差が出たらどうすればいいですか?

A. 少ない側に追加注入するか、多い側をヒアルロニダーゼで部分的に溶解して調整します。施術を受けたクリニックに相談しましょう。

Q8. 血管塞栓の症状はどのようなものですか?

A. 激しい痛み、注入部位の皮膚が白くなる、その後紫色に変色する、視力の低下や視野の異常などが症状です。これらが現れた場合は、直ちにクリニックに連絡し、緊急対応を受けてください。数時間以内の処置が重要です。

Q9. 安いクリニックは危険ですか?

A. 必ずしもそうとは限りませんが、相場より大幅に安い場合は注意が必要です。非正規品の使用、経験の浅い医師による施術、アフターフォローの不足などの可能性があります。価格だけでなく、医師の経験や症例数、使用製剤の正規性を確認することが重要です。

Q10. 失敗しない医師の選び方を教えてください

A. 形成外科専門医または皮膚科専門医の資格を持ち、ほうれい線治療の症例が豊富で、カウンセリングで十分に時間をかけてくれる医師を選びましょう。リスクについて正直に説明し、失敗時の対応方針が明確な医師が信頼できます。

Q11. カウンセリングで何を聞くべきですか?

A. 使用する製剤名、注入量と部位、予想される仕上がり、起こりうるリスク、失敗した場合の対処法、料金の詳細を必ず確認してください。疑問や不安は遠慮せず質問しましょう。

Q12. やり直しは何回までできますか?

A. 医学的には何度でも可能ですが、頻繁な注入と溶解は皮膚にダメージを与える可能性があります。最初から慎重に行い、やり直しを最小限にすることが理想的です。

Q13. 失敗を防ぐために患者ができることは何ですか?

A. 複数のクリニックでカウンセリングを受けて比較する、希望する仕上がりを明確に伝える、段階的な注入を選ぶ、焦らず2週間は腫れが落ち着くのを待つ、などが有効です。

Q14. 正規品と非正規品の見分け方はありますか?

A. 製品のパッケージや箱を見せてもらい、ロゴやホログラムが正規のものか確認しましょう。また、クリニックのウェブサイトに正規代理店である旨の記載があるかも確認ポイントです。不安な場合は、遠慮せず質問してください。

Q15. 失敗した場合の費用は誰が負担しますか?

A. 明らかな医療過誤の場合は、クリニック側が負担すべきです。ただし、患者の主観的な不満の場合は、有料での修正となることもあります。施術前に、失敗時の対応方針と費用負担について明確に確認しておくことが重要です。

Q16. 施術後、どのくらい経ったら最終的な仕上がりが分かりますか?

A. 施術後2週間程度で腫れが完全に落ち着き、最終的な仕上がりが分かります。それまでは「失敗」と判断せず、経過を見守ることが大切です。

Q17. 一度失敗した場合、再度ヒアルロン酸注射を受けても大丈夫ですか?

A. はい、溶解後2週間程度空けて、信頼できる医師のもとで再度施術を受けることは可能です。ただし、前回の失敗の原因を分析し、同じ過ちを繰り返さないことが重要です。

まとめ

ほうれい線へのヒアルロン酸注射は、適切に行われれば安全で効果的な治療法です。しかし、医師の技術や経験、使用する製剤、注入量などによって、結果は大きく左右されます。

失敗のリスクを最小限に抑えるには、価格ではなく医師の技術と誠実さで選ぶこと、カウンセリングで十分に時間をかけてイメージを共有すること、段階的な注入を選ぶことが重要です。

万が一失敗してしまった場合でも、ヒアルロン酸は溶解できるという可逆性があります。過度に恐れる必要はありませんが、慎重に選択することで、理想の結果を得られる可能性は大きく高まります。

正しい知識を持ち、信頼できる医師と出会うことで、あなたのほうれい線の悩みが解消されることを願っています。

この記事の監修者

藤井 靖成

藤井 靖成

大阪・梅田 藤井クリニック院長

総合内科内科専門医であると同時に消化器内視鏡専門医・指導医として従事。
胃がん大腸がんに対する内視鏡検査・手術を通して磨いた技術と豊富な経験を活かしながら、美容外科の技術も習得し約400,000例の美容外科施術経験を積む。また、皮膚額をベースとするスキンケア医療に取り組む。
「楽しく生きる」をコンセプトに、自身が理想とする医療を追い求めるため、2007年5月 大阪・梅田に「藤井クリニック」を開院。
開院以来、美容整形手術ではない、自然な綺麗さや若返りを目的としたメスを使わない美容医療を提供し、約20年間で180000例以上の実績を持つ。

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略歴

智弁学園和歌山中学・高等学校卒
和歌山県立医科大学卒(平成6年3月)
和歌山県立医科大学付属病院 第二内科学教室入局
日赤和歌山医療センター 麻酔科
国保日高総合病院 内視鏡室 室長
大手美容外科 勤務
亀田総合病院 研修
東京大学医学部付属病院 研修
藤井クリニック開院・院長就任(平成19年5月)
藤井クリニック大阪駅前開院(平成23年5月)


認定・所属学会

日本内科学会 認定医・専門医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医
日本肝臓学会専門医
総合内科専門医
日本消化器がん検診学会 会員
日本超音波医学会 会員
日本美容外科学会 会員
日本美容外科医師会 会員
日本美容皮膚科学会 会員
日本抗加齢医学会 会員
日本抗加齢美容医療学会 会員
日本レーザー医学会 会員


認定資格一覧
  • サーマクール認定医
  • ウルセラ認定医
  • クールスカルプティング認定医
  • ライポソニックス認定医
  • レスチレーン認定医
  • マクロレーン認定医
  •  
  • アラガンバイクロス認定医
  • アラガンハイラクラス認定医
  • ボトックスビスタ認定医

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